NPO法人設立の流れ|初心者でもわかる8ステップ完全ガイド【現役NPO理事長が解説】

- NPO法人を作りたいけれど、何から始めればいいのかわからない
- 調べても情報がバラバラで、結局どう進めればいいのか迷ってしまう
- 手続きが複雑そうで、本当に自分ひとりでできるのか不安になる
実はNPO法人の設立には、定款の作成・社員10人の確保・設立総会・所轄庁への申請・法務局での登記など、いくつものステップがあります。
どれも聞き慣れない手続きばかりで、「結局、何からやればいいのか分からない…」と感じてしまう方が多いのが実情です。

目﨑 敦也(めざき あつや)
アスタノ行政書士事務所
現役NPO法人理事長として、子ども支援団体NPO法人Unityを運営中。行政書士として、NPO法人の設立から助成金申請・運営サポートまで幅広く対応。
これからNPO法人を立ち上げたい方や、運営に悩む方をサポートしています。現場の経験をもとに、わかりやすくお伝えします。
この記事では、NPO法人の設立に必要な準備・手続きの流れを、全8ステップで順を追ってわかりやすく解説します。
この記事を読めば、NPO法人設立の全体像が明確になり、「何を・どの順番で・どこに届ければいいのか」が具体的にイメージできるようになります。
チェックリストや「自分でやるor行政書士に頼む」の比較も紹介しているので、ご自身に合った方法が見えてくるはずです。
むずかしそうに見えても実は、ひとつずつ進めればきちんと形にできます。
このページを読み終えるころには、あなたの団体が一歩前に進むための地図が手に入っているはずです。
NPO法人設立の8ステップ
1:基本事項を検討する
まずは、NPO法人として「どんな団体にしたいのか」という基本方針をしっかり固めることが大切です。
ここがブレていると、あとから手続きや運営でつまずく原因になります。
ここで検討すべき主な項目は、以下の通りです
- 社員(=正会員)を10人以上集められるか?
設立に必須の条件で、役員もこの中から選びます - この団体をつくる理由・想いを言葉にしておく
何のために活動するのか、設立の背景などを整理 - 活動のルールや仕組みの“たたき台”を考える
「団体の憲法」とも呼ばれるもの。次のSTEPで本格化 - なぜこの活動をするのか?どんなことをするのか?
社会課題、対象者、地域、活動の具体的な姿を言語化 - どんな運営体制にするか?会議や事務局は?
実際に動かせる・維持できる仕組みを考える - 誰を役員(代表・理事・監事)にするか考える
親族関係が偏らないようにするのが安心です - 1年間に何をして、どれくらいお金がかかるかを考える
助成金申請や所轄庁への説明にも必要になります
社員(=正会員)を10人以上集められるか?
NPO法人を設立するには、社員(=正会員)を10人以上集めることが法的に必要です。
この条件を満たさないと、そもそもNPO法人設立の申請ができません。
- 正会員とは
NPO法人では、団体の大切なことを決める「総会」で投票できるメンバーを「正会員(=社員)」と呼びます。
お金を出す“株主”ではなく、「団体の活動や理念に共感して、一緒に考え、動かしてくれる仲間」とイメージするとわかりやすいです。
- 正会員とよく混同される人たちとの違い
呼び名 | 内容 | 議決権(総会での投票) |
---|---|---|
正会員(社員) | 団体の意思決定に参加する構成メンバー | あり |
理事・監事(役員) | 団体の運営を担う人。正会員の中から選出 | あり |
スタッフ(職員) | お金をもらって働く人。正会員ではないことも多い | なし |
なお、この10人の中から理事3名・監事1名の役員を選ぶことも必要です。
役員が親族ばかりだと、所轄庁から「第三者性に欠ける」と判断されることもあります。
信頼できる第三者も含めて、バランスの良い構成にするのが安心です。
信頼できる人たちと一緒に、団体の土台を築く第一歩として、まずは10人の賛同者を集めるところから始めましょう。
この団体をつくる理由・想いを言葉にしておく
NPO法人を設立する際は、まず「なぜこの団体を立ち上げるのか」という理由や想いを、しっかりと言葉にしておくことがとても大切です。
所轄庁に提出する「設立趣旨書」では、次のような内容を記載する必要があります
- 団体を立ち上げようと思った背景・社会的な問題意識
- どんな目的で活動し、どのような方法で解決しようとしているのか
- 自分たちがこの活動を行う理由(過去の経験や想い)
これは単なる提出書類ではなく、今後の活動の“軸”となる重要な内容です。
設立後に方針がぶれないように、最初に「団体としての想い」をしっかり言葉にしておきましょう。
活動のルールや仕組みの“たたき台”を考える
NPO法人を設立するには、「この団体をどう運営していくか」**というルールや仕組みを、事前にイメージしておくことが大切です。
これは、次のステップで作成する「定款(ていかん)」の土台となる、非常に重要な準備になります。
定款とは
定款とは、団体の目的や活動内容、役員の役割や任期、会議の開き方など、運営に必要なルールをまとめた「団体の憲法」です。
設立時だけでなく、設立後にトラブルや迷いが生じたときの判断基準にもなります。
たとえば以下のような内容について検討しておくと、後の作業がスムーズになります。
- 総会や理事会はいつ、どのように開くか
- 会員の入退会ルールはどうするか
- 役員の任期は何年にするか
- 事業年度や会計の締めはいつにするか
これらはすべて、定款の中で明記が求められる内容です。
とはいえ、最初から完璧なルールを作る必要はありません。
まずは「こういう形なら自分たちでも運営できそう」というイメージを持ちながら考えるのがポイントです。
なぜこの活動をするのか?どんなことをするのか?
NPO法人の設立にあたっては、「どんな社会課題に、なぜ自分たちが取り組むのか」、「そのためにどんな活動を行うのか」 を、具体的に言語化しておくことが必要です。
所轄庁に提出する「定款」や「設立趣旨書」には、団体の目的や事業内容を明確に記載する必要があります。
これらの内容があいまいであると、認証がスムーズに進まず、差し戻される可能性もあります。
また、この言語化は、助成金の申請やメンバー間での方向性の共有にも大きな影響を与えるものです。
実際に言語化するにあたって、押さえておくと良い3つのポイントがあります。
- なぜ:どんな社会課題に気づき、なぜ自分たちが取り組むのか?
- 誰に:子ども/高齢者/ひとり親家庭など、支援対象は誰か?
- どうやって:居場所づくり/相談支援/イベント開催など、どんな手段で?
たとえばこんなイメージ
- 目的:地域の子どもの孤立を防ぐ
- 事業内容:放課後の居場所づくり/学習支援/保護者向けの相談会開催
このように、「対象」「内容」「手段」がセットで整理されていると、定款や事業計画書にも展開しやすくなります。
「なぜこの活動をするのか」「何をするのか」は、団体の“核”になります。
あとでぶれないためにも、なるべく早い段階でチーム内で共有しておきましょう。
どんな運営体制にするか?会議や事務局は?
NPO法人を安定して運営していくには、総会・理事会・事務局などの体制をあらかじめ設計しておくことが重要です。
NPO法人は、1人で運営するものではなく、みんなで意識決定をしながら進めていく必要があります。
そのために、無理のない仕組みをつくっておくことで、設立後にスムーズな運営が可能になります。
また、定款にも、以下のようなルールを明記する必要があります。
- 総会の開催方法
- 理事会の役割と開催頻度
- 意思決定のルール(多数決?全会一致?)
体制があいまいなまま設立すると、「誰が何をするのか」が不明確になり、活動がうまく回らなくなる恐れがあります。
体制づくりのイメージをつかみやすくするために、NPO法人でよく設定される「総会」「理事会」「事務局」の役割を、以下にまとめました。
組織 | 内容 |
---|---|
総会 | 年1回以上開催。すべての正会員が参加し、団体の重要事項を決定する場。 |
理事会 | 理事が集まり、日常的な意思決定・活動の調整を行う会議体。 |
事務局 | 会計、書類管理、問い合わせ対応など、日々の実務を担う役割。 |
少人数の団体では、最初からすべてを分けるのがむずかしい場合もあります。
その場合は、代表が理事・事務局を兼ねるなど、無理のない形で始めても問題ありません。
大切なのは、「誰が、何を担当するのか」を事前に明確にしておくことです。
どんなに素晴らしい目的があっても、体制が整っていないと、団体はうまく機能しません。
現実的に回せる運営体制を、設立前にしっかり考えておきましょう。
誰を役員(代表・理事・監事)にするか考える
NPO法人を設立するには、理事3名以上・監事1名以上の役員を選ぶ必要があります。
誰にどの役職をお願いするかは、団体の信頼性にも関わる重要なポイントです。
役員は、団体の意思決定や監督、対外的な信頼性に関わる中核的な存在です。
特に所轄庁の審査では、以下のような点が良く見られます。
- 役員構成のバランスが取れているか
- 親族のみで固められていないか
- 実際に活動しているかどうか
このような点に問題があると、「形式だけの団体では?」と疑問視されてしまうこともあります。
では、具体的に役員にはどんな役割があるのか、以下にまとめてみました。
役職 | 役割 |
---|---|
代表理事(または理事長) | 団体を代表して外部とやりとりを行う責任者 |
理事 | 運営や意思決定に関わるメンバー(2人以上必要) |
監事 | 団体の活動や会計をチェックする独立した監督役 |
信頼できる人にお願いするのが前提ですが、「形式的な名前貸し」にならないよう、きちんと活動に参加できる人を選ぶことが大切です。
役員は、団体の設立時だけでなく、長期的に運営を支える“仲間”です。
「誰に、どの役割をお願いするか」をしっかり話し合い、納得感のある体制を整えましょう。
1年間に何をして、どれくらいお金がかかるかを考える
NPO法人を設立するには、1年間の活動計画と、その活動にかかる費用の見通しを立てておく必要があります。
これは、所轄庁に提出する「事業計画書」や「活動予算書」にも含まれる、非常に重要な要素です。
事業計画や予算がないと、「この団体は本当に活動できるのか?」という疑問を持たれてしまいます。
また、助成金の申請や会計処理の基準にもなるため、あらかじめ計画とお金の流れをイメージしておくことがとても重要です。
実際に考えるにあたって、押さえておくと良い3つのポイントがあります。
- 活動内容: 年間で何をするか?(例:イベント開催、学習支援、交流会など)
- 頻度・規模:月1回/年3回など、どれくらいの回数?参加人数はどのくらい?
- 必要経費:会場費・備品費・人件費・交通費・印刷費など、想定できる費用をリストアップ
最初から完璧な予算でなくても大丈夫です。
以下のような収支のイメージがあるだけでも、審査や助成金申請時に信頼度が高まります。
項目 | 内容 |
---|---|
自己資金 | 立ち上げ時に出せるお金は? |
寄附・会費 | 支援者からの協力や月会費の見込み |
助成金 | 公的・民間の助成金に応募する予定があるか |
支出見込み | どの活動にいくら必要か?(大まかでもOK) |
事業計画と予算は、団体の“見通し”と“信頼”を示す設計図です。
最初から完璧でなくても、無理のない現実的なプランを立てておくことが、設立後の安定運営につながります。
2:定款と設立に必要な書類を作成する
NPO法人を設立するには、「定款(ていかん)」をはじめとした各種書類を、正式な形式で整えて提出する必要があります。
これらは、所轄庁へ申請する際に必ず提出する重要な書類で、不備や記載ミスがあると受理されなかったり、差し戻されたりすることもあります。
では、実際にどんな書類を用意する必要があるのか、以下の表にまとめました。
書類名 | 内容 |
---|---|
定款(ていかん) | 団体の目的・事業内容・役員体制・運営ルールなどを定めた「団体の憲法」 |
役員名簿 | 理事・監事の氏名・住所(または居所)、報酬の有無を記載 |
役員の就任承諾書・誓約書(謄本) | 就任への同意と「欠格事由に該当しない」ことの誓約 |
役員の住所(または居所)を証する書類 | 住民票の写しなど(発行から3か月以内) |
社員10人以上の氏名・住所 | 社員(=正会員)10名以上の基本情報を記載した名簿 |
認証要件に適合していることの確認書 | 暴力団でない、営利目的でないなど、NPO法の要件を満たす旨の確認書 |
設立趣旨書 | 団体を立ち上げた背景・目的・活動方針を記載 |
設立決定の議事録(謄本) | 設立総会での定款承認・役員選任などの決議内容を記録 |
事業計画書(初年度・翌年度) | 活動内容を1年単位で記載。頻度・対象・方法を具体的に |
活動予算書(初年度・翌年度) | 収入・支出の見込み(助成金・寄附・人件費など)を記載 |
提出書類の様式や添付資料は、所轄庁によって細かく異なることがあります。
申請前に、必ず各自治体のホームページで最新情報を確認するようにしましょう。
このステップは、手間がかかる分、不備なく整えておくことで申請やその後のやりとりがスムーズになります。
「ちょっと面倒…」と感じるかもしれませんが、ここでの準備が設立成功のカギです。
1つずつ丁寧に取り組んでいきましょう!
3:設立総会を開催し、議事録を作成する
NPO法人を設立するには、正会員による「設立総会」を開催し、その内容を記録した「議事録」を作成する必要があります。
設立総会とは
設立総会は、団体を法人として正式に立ち上げる意思決定を行う場です。
ここで「この団体をNPO法人として設立する」と全員で確認・決議することで、正式なプロセスが完了します。
この総会で、団体を設立することや定款の承認、役員の選任などを正式に決定します。
所轄庁へ提出する議事録には、以下のような事項が正式に決定されたことが記載されている必要があります。
- 定款の承認
- 役員(理事・監事)の選任
- 設立趣旨・活動方針の確認
- その他必要事項(会員規定など)
これらが正確に記載されていない場合は、申請が差し戻されることもあるため要注意です。
議事録は、法人設立の手続きを証明する「公式な記録」です。
書式や記載内容に不備があると再提出になることもあるため、テンプレートや記入例を活用して、慎重に作成しましょう。
4:所轄庁へ認証申請をする
設立総会が終わったら、次はいよいよ「所轄庁」へNPO法人設立の認証申請を行います。
これは「NPO法人として認めてもらう」ための最初の公式ステップです。
この認証を受けなければ、法務局での登記手続きには進めません。
所轄庁とは
所轄庁とは、団体の主な活動エリアを担当する都道府県または政令指定都市の窓口を指します。
(例:大阪市内で活動する団体なら「大阪市市民局」などが窓口になります)
提出する書類は、以下のようになります。
- 定款(ていかん)
- 役員名簿
- 役員の就任承諾書・誓約書(謄本)
- 役員の住所(または居所)を証する書類
- 社員10人以上の氏名・住所
- 認証要件に適合していることの確認書
- 設立趣旨書
- 設立決定の議事録(謄本)
- 事業計画書(初年度・翌年度)
- 活動予算書(初年度・翌年度)
※提出書類の様式や添付資料は、所轄庁によって細かく異なることがあります。申請前に、必ず各自治体のホームページで最新情報を確認するようにしましょう。
受付印を押してもらった「提出控え」は必ず保管しましょう。
この控えが、後の登記手続きで必要になります。
申請後、所轄庁では書類の確認を行い、約2か月間の「公表・縦覧期間」に入ります。
その後、問題がなければ「認証」または「不認証」の決定が通知されます。
所轄庁への申請は、NPO法人になるための“公的な第一関門”です。
ミスや不備があると差し戻し・再提出となり、スケジュールに大きく影響します。
申請書類を出す前に、必ずダブルチェックを行い、提出書類一覧や所轄庁の最新情報を確認しましょう。
5:認証後に法務局で登記する
所轄庁から「設立認証」を受けたら、次に法務局で「設立登記」の手続きを行います。
この登記を完了することで、はじめて法人格が成立し、正式にNPO法人として活動できるようになります。
この登記を認証後2週間以内に行う必要があります
登記手続きは、団体の主たる事務所を管轄する法務局で行います。
提出する主な書類は以下のとおりです
書類 | 説明 |
---|---|
登記申請書 | 所定様式(法務局HPからDL可) |
所轄庁から交付された認証書の写し | 設立認証の証明として必要 |
定款の写し | 認証済みのもの |
設立総会議事録の写し | 定款承認・役員選任を証明 |
印鑑届出書 | 法人印(代表者印)を登録 |
代表者の印鑑証明書 | 1通(個人のもの) |
登録免許税(非課税) | NPO法人の登記は無料です |
登記が完了すると、以下の証明書類が取得可能になります
- 登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- 法人印鑑証明書
これらは、口座開設・補助金申請・契約時などに必要になるため、複数部取得しておくと安心です。
登記が終わったらそれで完了…ではありません。
続いて、税務署・都道府県・市区町村への届出や、口座開設などの事務手続きも待っています。
スムーズに進めるために、登記が完了するまでに次のステップの準備も始めておきましょう。
6:税務署・自治体などへ設立届を出す
登記が完了したら、税務署・都道府県・市区町村などの関係機関に「設立届」を提出しましょう。
NPO法人も、法人格を持つ団体として税務や行政手続きの登録が必要です。
これを怠ると、税務上の不利益を受けたり、行政とのやりとりに支障が出たりすることがあります。
それぞれの機関で提出する書類は、以下の通りです
機関名 | 提出書類 |
---|---|
税務署 | ・法人設立届出書 ・青色申告の承認申請書(任意) ・給与支払事務所等の開設届(該当する場合) |
都道府県税事務所 | ・法人設立届出書(必要な都道府県のみ) |
市区町村 | ・法人設立届(必要な自治体のみ) ※不要な場合もあります |
提出の目安は、登記完了から2か月以内。
必要書類や様式は自治体によって異なるため、事前に各機関のWebサイトで確認しておくのが安心です。
登記が完了したら、税務署や自治体などの関係機関に「設立届」を提出します。
設立届の提出をもって、法人としての税務上の立場が明確になります。
助成金申請や契約時にも必要となることがあるため、後回しにせず、早めに済ませておくことが大切です。
7:法人名義の口座を開設し、活動をスタートする
登記と各種届出が完了したら、いよいよ法人名義の銀行口座を開設し、本格的な活動をスタートさせましょう。
寄付・会費・助成金などの受け取りや管理には、個人名義ではなく「NPO法人名義の口座」が必要です。
法人口座が必要な理由
- 個人口座では、信頼性に欠けると見られることがあります
- 入出金の流れが不明瞭になり、トラブルの原因になることも
- 助成金や補助金の振込先として、法人名義の指定が求められるケースもあります
口座開設に必要な書類は以下の通りです。
書類名 | 備考 |
---|---|
登記簿謄本(履歴事項全部証明書) | 発行から3か月以内のもの |
法人印鑑証明書 | 登記印の登録証明 |
定款の写し | 認証済のもの(所轄庁印あり) |
代表者の本人確認書類 | 運転免許証など |
銀行所定の申込書類 | 銀行で取得・記入します |
銀行によっては、事前審査・代表者面談・追加書類提出などを求められる場合があります。
事前に電話で確認しておくと安心です。
口座開設後には、次に3つをやっておくことをおすすめします
- 会計帳簿を準備し、資金の出入りを明確にする
- 経費の精算ルールなど、運営上の会計ルールを整備しておく
- クラウド会計やエクセル管理など、管理方法も統一しておく
法人口座の開設は、「NPO法人としての信用力」を高める第一歩です。
資金の流れを透明に保つことは、信頼される団体になるための基盤でもあります。
8:設立後の運営体制を整える
NPO法人は、設立しただけでは終わりません。
安定的に活動を続けていくためには、“運営のしくみ”を整えることが必要不可欠です。
設立直後はやることが多く感じられますが、最初にしっかり体制を整えることで、あとがぐっと楽になります。
実際に、整えておきたい4つのポイントを以下にまとめました。
運営項目 | 内容・ポイント |
---|---|
書類提出の体制づくり | 毎年の ・事業報告書 ・活動計算書 ・財産目録 などを正しく作成・提出できるようにする |
メンバー間の情報共有 | 役員・正会員との連絡体制を整備。 定期的な会議やチャットツールの活用もおすすめ |
会計・資金管理 | 帳簿の作成・収支管理を明確に。 クラウド会計やExcelの活用も有効 |
外部との関係構築 | 寄付や助成金、広報活動など、 “団体を応援してもらう仕組み”を整える |
会計・報告・体制づくりを“運営の3本柱”と考えておくと、何から整えればよいかが明確になります。
NPO法人の運営には、法的義務や事務作業も多く含まれます。
とはいえ、焦る必要はありません。
無理のない範囲で、できることから整えていけば大丈夫です。
設立前の注意点
社員(正会員)10人が集まらない
社員(=正会員)を10人以上集められるか?
NPO法人を設立するには、社員(=正会員)を10人以上集めることが法的に必要です。
この条件を満たさないと、そもそもNPO法人設立の申請ができません。
- 正会員とは
NPO法人では、団体の大切なことを決める「総会」で投票できるメンバーを「正会員(=社員)」と呼びます。
お金を出す“株主”ではなく、「団体の活動や理念に共感して、一緒に考え、動かしてくれる仲間」とイメージするとわかりやすいです。
- 正会員とよく混同される人たちとの違い
呼び名 | 内容 | 議決権(総会での投票) |
---|---|---|
正会員(社員) | 団体の意思決定に参加する構成メンバー | あり |
理事・監事(役員) | 団体の運営を担う人。正会員の中から選出 | あり |
スタッフ(職員) | お金をもらって働く人。正会員ではないことも多い | なし |
10人集めるにあたってよくあるつまずきポイントを以下にまとめました。
- 家族や友人に「名前だけ貸して」とお願いしたら、あとでトラブルに…
- 役割や責任をよく説明せずに集めた結果、総会に出てもらえないことも…
上記のようなつまずきを解決するヒントを以下にまとめました。
- 「社員=構成メンバー」であることをきちんと説明する
- 名義貸しではなく、「応援してくれる実働メンバー」を集める意識を持つ
- それでも難しい場合は、任意団体や一般社団法人など、他の形態を検討するのもOK
10人という人数要件は、NPO法人設立の中でも意外と大きなハードルです。
早めに声をかけ、団体の想いをしっかり伝えることが、設立成功の第一歩です。
定款の内容が曖昧で差し戻される
NPO法人の設立には、「定款(ていかん)」という団体のルールを明文化した書類が必須です。
これは、団体の“設計図”ともいえる重要な文書で、所轄庁への提出時にも厳しくチェックされます。
よくある差し戻しの原因をご紹介します
- 活動目的が抽象的すぎる
例:「地域を元気にしたい」→ 具体性がなく、何をする団体か不明 - 必須の条文が抜けている
例:役員の選任方法、総会の開催、会計処理など - 用語が統一されていない
例:「社員」と「正会員」が混在している、など
定款を書くときは以下のポイントを押さえておくことが大切です
- 「かっこいい言葉」よりも明確でシンプルな表現を意識する
- 雛形(ひながた)をベースに、自団体に合わせて調整する
- できれば第三者にチェックしてもらうのが安心
定款は、設立だけでなくその後の運営にもずっと使う書類です。
差し戻しを防ぐためにも、「正確さ・明確さ・抜け漏れがないか」を意識して作りましょう。
所轄庁によって提出ルールが異なる
NPO法人の認証申請は、都道府県や政令市の「所轄庁」ごとに、細かなルールが異なることがあります。
NPO法は全国共通ですが、申請の運用は各自治体の裁量に委ねられているため、実際の対応にはばらつきがあります。
よくある違いの例をご紹介します
- 同じ書式でも、「○○という文言を追加してください」など、個別に修正を求められることがある
- 提出方法が異なる(例:紙のみ提出/PDFと併用/メール提出OK など)
- 受付時間や相談窓口の対応がバラバラ
NPO法人の認証申請を行うにあたっては、以下のポイントを押さえておくことをおすすめします。
- 必ず事前相談を申し込む(電話でもOK)
- 申請先の公式ホームページで最新の要項や書式を確認
- 過去に申請した人の事例や、専門家の支援実績があれば参考にする
「正しい書類を出したはずなのに…」とならないためにも、早めに所轄庁と連絡を取り、ルールや書式の違いを確認しておきましょう。
自分でやる場合と行政書士に依頼する場合の比較
NPO法人の設立手続きは、自分で進めることもできますし、専門家(行政書士など)に依頼することもできます。
それぞれにメリット・注意点があり、「時間」「費用」「確実性」など、あなたの状況に応じて最適な方法は異なります。
以下に、両者の違いをわかりやすく比較しました。
項目 | 自分で設立する場合 | 専門家に依頼する場合 |
---|---|---|
費用 | 0~1万円程度 | 20万〜30万円程度 |
必要な時間と労力 | 多くかかる(すべて自力で調査) | 少ない(書類作成や手続きも任せられる) |
確実性 | 差し戻しや手戻りの可能性あり | 専門家のチェックで安心 |
向いている人 | 時間がある/調べ物が苦でない人 | 忙しい/失敗したくない/相談したい人 |
自分で設立する場合のメリット・注意点
NPO法人の設立は、手続きの流れや書類作成を理解すれば、自分で進めることも十分可能です。
費用を抑えられる反面、時間や労力がかかる点には注意が必要です。
メリット | 注意点 |
---|---|
費用を抑えられる 制度や仕組みの理解が深まる スケジュールを柔軟に調整できる | 時間と労力がかかる 手戻りや差し戻しが起きやすい 相談できる相手が少ない |
「とにかく費用を抑えたい」「まずは仕組みを知りたい」という方には、自分での設立もおすすめです。
ただし、スムーズに進めるには情報収集と計画的な準備が不可欠です。
専門家に依頼する場合のメリット・費用の目安
行政書士などの専門家に依頼することで、手続きの負担を大きく減らすことができます。
費用はかかりますが、ミスや差し戻しを防げる点や、スピーディーに設立できる点が大きなメリットです。
メリット | 注意点 |
---|---|
早くて安心 制度変更にも対応できる 書類のクオリティが高い | 費用がかかる 任せきりになってしまうこともある |
「忙しい」「早く確実に進めたい」「信頼できる人に相談したい」という方には、専門家への依頼が向いています。
ただし、費用とのバランスや、団体としての関与度も意識して選びましょう。
どちらが向いているか判断するポイント
「自分でやるか?専門家に頼むか?」を決めるときは、費用・時間・安心感の3つを軸に考えてみましょう。
自分で設立するのが向いている人 | 専門家に依頼するのが向いている人 |
---|---|
なるべく費用をかけずに設立したい 調べ物や書類づくりが苦でない 制度をしっかり理解したうえで、運営にも活かしたい | 仕事や家庭が忙しくて、手続きの時間が取れない ミスや差し戻しを避けて、スムーズに設立したい 最初から運営面も相談しながら整えていきたい |
どちらが正解というわけではありません。
あなたの状況や目的に合った方法を選ぶことが一番大切です。
NPO法人設立のためのチェックリスト
NPO法人の設立には、書類や手続きの抜け漏れがないよう、チェックリストを使って進捗を管理することが大切です。
NPO法人の設立には、書類や手続きの抜け漏れを防ぐことが大切です。
このチェックリストを活用して、進捗状況を確認しながら進めていきましょう。
書類編(申請前に揃えるべきもの)
- 正会員(社員)10人以上の名簿を作成した
- 設立趣旨書・定款を作成し、内容を確認した
- 設立総会を開催し、議事録を作成した
- 役員関係書類(名簿・就任承諾書・誓約書など)を揃えた
- 事業計画書・活動予算書(初年度・翌年度分)を作成した
手続き編(設立後の流れ)
- 所轄庁に認証申請を行い、受付印付きの控えを保管した
- 認証後2週間以内に法務局で登記した
- 税務署・自治体などに設立届出を提出した
- 法人口座を開設した
- 年次報告など、設立後の継続手続きについて準備を始めている
このチェックリストを使えば、申請時の不安や見落としをぐっと減らせます。
一つひとつ確認しながら、確実に前へ進みましょう。
よくある質問|設立を検討中の方へ
Q:設立に最短でどのくらいかかりますか?
A. 最短でも3か月程度かかるのが一般的です。
NPO法人を設立するには、いくつかのステップを踏む必要があり、特に所轄庁での認証手続きに時間がかかるためです。
具体的には、以下のようなスケジュール感になります
手続きの流れ | 所要期間の目安 |
---|---|
書類の準備 | 約1〜2週間 |
所轄庁の認証 | 約2か月 |
登記・税務署などへの届出 | 約1〜2週間 |
申請書類に不備があると差し戻しになることもあるため、余裕を持って全体で「3か月程度」を想定しておくのが安心です。
役員や社員に家族を含めても大丈夫?
A. 一定の条件を守れば、家族を含めても問題ありません。
NPO法では、「役員のうち親族などが全体の3分の1以下であること」が求められています。
これは団体の公正性・透明性を保つために定められているルールです。
たとえば以下のようなケースは要注意です
役員構成 | 判定 |
---|---|
理事3人中2人が親族 | ❌(NG) |
理事3人中1人だけが親族 | ✅(OK) |
親族の割合が多すぎると、所轄庁から「実質的に家族運営の団体では?」と指摘される可能性もあります。
構成バランスに気をつければ、家族の参加ももちろん可能です。
不安な場合は、事前に所轄庁へ確認・相談しておくと安心ですよ。
設立後すぐに助成金はもらえますか?
A. 設立直後に助成金がもらえるケースは、正直なところかなりまれです。
多くの助成金では、「過去の活動実績」や「計画の具体性」「体制の信頼性」が審査のポイントになります。
そのため、設立したばかりで実績がほとんどない場合は、どうしても採択されにくい傾向にあります。
たとえば現実的な流れはこんな感じです:
- 設立初年度は、寄付・会費・自己資金で小規模にスタート
- 1年程度の活動実績を積み、翌年度以降に助成金を本格申請
助成金は「いきなりもらえるもの」ではなく、「活動を積み重ねた先に得られる後押し」だと考えると良いでしょう。
だからこそ、設立直後は「小さく始めて、確実に実績をつくる」ことが重要です。
まとめ|NPO法人設立は書類の正確さと順番通りにすすめること
この記事では、NPO法人の設立に必要な準備・手続きの流れを、全8ステップで順を追ってわかりやすく解説しました。
要点をまとめると以下の通りです。
- 設立前の準備が最重要!:正会員10人や団体の方針づくりからスタート
- 定款や書類の作成にはルールあり:不備があると差し戻しになるので注意
- 認証・登記を経て“法人格”を取得:登記して初めて法人として成立
- 設立後も運営の準備が必要:報告義務や会計管理も想定しておこう
NPO法人の設立では、書類の正確さと順番通りに進めることが重要なポイントとなります。
ぜひこの記事でご紹介したポイントを押さえて、無理なく、確実にNPO法人設立を進めてみてください。
- ここまで読んだけど、やっぱり自分だけでできるか不安…
- 自分の団体の場合はどう進めるべき?
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